暗黒物質アクシオン探索実験 EDAMAME開始
・暗黒物質とは
我々の知っている「通常の物質」は、宇宙全体のわずか5%程度に過ぎません。宇宙にはその約5倍もの「暗黒物質」が存在しています。この暗黒物質が重力を通じて、この宇宙を支配しています。暗黒物質の正体は何か? その答えは分かっていません。しかし、我々の銀河の回転曲線から、我々の銀河にも暗黒物質が存在することが分かっています(図1)。
暗黒物質は、我々の宇宙の大きな謎であり、我々はその解明を目指しています。

図 1:我々の銀河の回転曲線
回転速度(データ)に対して重力源(黒線)が不足している。この不足分が暗黒物質[1]
・アクシオンとは
暗黒物質の正体は分かっていませんが、その候補となる素粒子はいくつか考えられています。今特に注目されている素粒子は、WIMPs(Weakly Interacting Massive Particles、弱く相互作用する重粒子)とアクシオンです。
アクシオンは、クオークとクオークを結合する力(強い相互作用)における大問題 1) の1つを解決するために導入された素粒子です。このアクシオンは、これに加えて、暗黒物質の問題も解き明かす可能性があります。つまり、アクシオンは「1粒で2度おいしい」素粒子なのです。
アクシオンが暗黒物質である場合、アクシオン質量は非常に軽く、電子の1億から1,000億分の1程度と予測されています。いかに軽いかが分かるでしょう。
アクシオンは非常に軽いので、素粒子ではあるのですが、「波」として存在します。つまり、アクシオンが暗黒物質である場合、我々は「暗黒物質の波」の中に存在していることになります(図2)。

図 2:我々は、暗⿊物質の「波」の中にいるのかも知れない
・暗⿊物質アクシオン探索実験(EDAMAME)
このように、暗⿊物質アクシオンは注⽬されており、世界中で発⾒を⽬指した競争が展開されています。アクシオンは、強磁場の中で⾮常に弱い光⼦に転換する性質があります。暗⿊物質探索では、この微弱な光⼦を増幅して検出しています。この増幅のやり⽅がポイントで、様々なグループで⾊々⼯夫しています。
我々は、共振空洞を使って信号を増幅する「ハロースコープ」と呼ばれる⼿法を⽤います(図3)。ハロースコープの特徴は、共振空洞によって微弱信号を1億〜10億倍も増幅する⼀⽅で、雑⾳は増幅しない、と⾔う点です。

図 3:EDAMAME実験の検出原理
我々のグループは、東北⼤学 ニュートリノ科学研究センターの磁⽯(直径 110 ミリ、最⾼磁場9 T 2) と冷凍機(低到達温度は3.8 K)⽤いて、アクシオン探索実験「EDAMAME」を開始しました(図4)。

図 4:EDAMAME実験装置の写真
実験グループ名「EDAMAME」は「Explore the DArk matter Mystery through AnomalousMicrowave Emission」の略です。
EDAMAME は、2024 年 1 ⽉に最初のテストランを⾏い、調整を続けてきました。2025年度のなるべく早い時期に本格実験を開始する予定です。
1) この大問題を「強いCP問題」と呼びます。詳しくは、[2]などを参照して下さい。
2) 永久磁⽯で最も強⼒なネオジム磁⽯が約1.4 T、医療⽤MRIでは1.5 Tと3T のものが主流ですから、9 T はかなり強いと⾔えます。
参考文献
[1] Soonclaim, CC BY-SA 3.0
[2] https://ja.wikipedia.org/wiki/強いCP問題
我々の知っている「通常の物質」は、宇宙全体のわずか5%程度に過ぎません。宇宙にはその約5倍もの「暗黒物質」が存在しています。この暗黒物質が重力を通じて、この宇宙を支配しています。暗黒物質の正体は何か? その答えは分かっていません。しかし、我々の銀河の回転曲線から、我々の銀河にも暗黒物質が存在することが分かっています(図1)。
暗黒物質は、我々の宇宙の大きな謎であり、我々はその解明を目指しています。

図 1:我々の銀河の回転曲線
回転速度(データ)に対して重力源(黒線)が不足している。この不足分が暗黒物質[1]
・アクシオンとは
暗黒物質の正体は分かっていませんが、その候補となる素粒子はいくつか考えられています。今特に注目されている素粒子は、WIMPs(Weakly Interacting Massive Particles、弱く相互作用する重粒子)とアクシオンです。
アクシオンは、クオークとクオークを結合する力(強い相互作用)における大問題 1) の1つを解決するために導入された素粒子です。このアクシオンは、これに加えて、暗黒物質の問題も解き明かす可能性があります。つまり、アクシオンは「1粒で2度おいしい」素粒子なのです。
アクシオンが暗黒物質である場合、アクシオン質量は非常に軽く、電子の1億から1,000億分の1程度と予測されています。いかに軽いかが分かるでしょう。
アクシオンは非常に軽いので、素粒子ではあるのですが、「波」として存在します。つまり、アクシオンが暗黒物質である場合、我々は「暗黒物質の波」の中に存在していることになります(図2)。

図 2:我々は、暗⿊物質の「波」の中にいるのかも知れない
・暗⿊物質アクシオン探索実験(EDAMAME)
このように、暗⿊物質アクシオンは注⽬されており、世界中で発⾒を⽬指した競争が展開されています。アクシオンは、強磁場の中で⾮常に弱い光⼦に転換する性質があります。暗⿊物質探索では、この微弱な光⼦を増幅して検出しています。この増幅のやり⽅がポイントで、様々なグループで⾊々⼯夫しています。
我々は、共振空洞を使って信号を増幅する「ハロースコープ」と呼ばれる⼿法を⽤います(図3)。ハロースコープの特徴は、共振空洞によって微弱信号を1億〜10億倍も増幅する⼀⽅で、雑⾳は増幅しない、と⾔う点です。

図 3:EDAMAME実験の検出原理
我々のグループは、東北⼤学 ニュートリノ科学研究センターの磁⽯(直径 110 ミリ、最⾼磁場9 T 2) と冷凍機(低到達温度は3.8 K)⽤いて、アクシオン探索実験「EDAMAME」を開始しました(図4)。

図 4:EDAMAME実験装置の写真
実験グループ名「EDAMAME」は「Explore the DArk matter Mystery through AnomalousMicrowave Emission」の略です。
EDAMAME は、2024 年 1 ⽉に最初のテストランを⾏い、調整を続けてきました。2025年度のなるべく早い時期に本格実験を開始する予定です。
1) この大問題を「強いCP問題」と呼びます。詳しくは、[2]などを参照して下さい。
2) 永久磁⽯で最も強⼒なネオジム磁⽯が約1.4 T、医療⽤MRIでは1.5 Tと3T のものが主流ですから、9 T はかなり強いと⾔えます。
参考文献
[1] Soonclaim, CC BY-SA 3.0
[2] https://ja.wikipedia.org/wiki/強いCP問題