ニュートリノ観測で大質量星をのぞく?

大質量星の中身:玉ねぎ構造の形成
超新星爆発を起こす前の大質量星は、誕生してから長い間、重力と内部の圧力のバランスを保ちながら安定して進化します。しかし進化の後半になると、物質とほとんど相互作用しない「ニュートリノ」が大量に生成されるようになり、星の中心部からエネルギーを持ち去ってしまいます。星は安定を保つため、中心部をさらに圧縮して密度と温度を上昇させ、その結果、爆発直前には密度が約1010g/cm³、温度が約100億度という超高温・高密度の極限状態に達します。また、進化が進むにつれて中心部では核融合反応が進行し、より重い元素が次々と作られていきます。高温な中心部ほどより重い元素を作ることができるため、爆発前の親星の内部は、図のような「玉ねぎ構造」になっていると考えられています。このように、爆発前の親星は内部の「熱力学的な状態の分布」と「元素組成の分布」によって特徴づけられます。


図:爆発前の親星の玉ねぎ構造


前兆ニュートリノ観測による内部構造の検証
では、このような親星内部の状態を、私たちが直接確かめる方法はあるのでしょうか? 通常の天体観測には電磁波が用いられますが、星の内部は電磁波にとって不透明であるため、中心の様子を直接のぞき込むことはできません。そこで私たちが提案しているのが、進化の最終段階で大量に放出される「前兆ニュートリノ」を用いた検証です。ニュートリノが物質と相互作用する確率は電磁波の約1025分の1と極めて低く、星の内部からほぼ阻害されることなく抜け出すことができます。これをスーパーカミオカンデなどの大型検出器で捉えることができれば、親星の内部状態を直接知る手がかりになります。これまでの研究では、地球の比較的近く(およそ3500光年以内)で超新星爆発が起こった場合、爆発の数日前からこの前兆ニュートリノを検出できると予想されています。ベテルギウスやアンタレスといった有名な超新星爆発の候補天体もこの観測対象であり、実際の検出が待ち遠しいですね!

最新論文:「爆発直前のニュートリノ検出数から読み解く親星構造」
私たちの研究グループは、前兆ニュートリノ観測から親星の内部構造について何がわかるのかを議論した新しい成果を発表しました。 具体的には、2つの星の進化計算コード(MESAとHOSHI)を用いて、初期質量の異なる30個の親星モデルを作成しました。その上で、それぞれのモデルから放出されるニュートリノの光度やスペクトルを計算し、実際の検出器でのニュートリノの検出数を見積もりました。そして、各検出器で再構成した星からのニュートリノ放出数が、親星の内部構造を特徴づけるどの物理量と強く相関しているのかを調査しました。

結果は図の通りです。どの検出器や計算コードを想定した場合でも、爆発のおよそ1日前から放出されるニュートリノの数は、親星の「コンパクトネス(ξ2.5)」と呼ばれる指標と強い相関を持つことが明らかになりました。 コンパクトネスとは、一言で言うと「星の中心部にどれだけ物質が密集しているか」を表す指標です。図より、中心部に物質がより多く集まっている星ほど、より多くのニュートリノを放出することがわかります。つまり、実際の観測においてニュートリノの検出数から、親星のコンパクトネスを大まかに推定できる可能性を示唆してします。コンパクトネスは、鉄コアの質量など他の親星パラメータや、超新星爆発の起こりやすさといった爆発ダイナミクスそのものとも密接に関連しています。そのため、ニュートリノ観測によるコンパクトネスの推定から他の物理量にも制限をかけることができ、現状の親星モデルや爆発モデルの理論的な「あら」を見つけ出し、改良していく大きな一歩になると期待されています。
詳しくは、以下の論文をご参照ください!
https://arxiv.org/abs/2603.09810


図:検出装置にて再構成された親星からのニュートリノ放出数と
コンパクトネスの相関(親星までの距離:200pc)

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著者

加藤ちなみ
計画研究E02
東京大学助教
最近の楽しみは、2歳になった息子とお話することです。まだ呂律が回らないけれど、一生懸命話そうとする姿に毎日癒されています。

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