国際会議CYGNUS: 方向感度を持つ暗黒物質探索

2026年2月23日から25日にかけてCYGNUS2026という国際会議が神戸で開催され、方向感度を持つ暗黒物質探索実験を推進する世界中の研究者が集まって議論しました。CYGNUSという国際会議は2007年から隔年で開催されており、およそ20年の歴史がある国際会議です。国内では2013年に富山で開催し、13年ぶりに日本で主催しました。この国際会議、私が主催の代表を務めました。初の国際会議運営 (しかも代表) でしたが、主催の神戸大スタッフをはじめとした運営陣に助けてもらいながらなんとか無事に終えることができました。今回はこの国際会議について少しお話したいと思います。

国際会議の話の前に、そもそもの方向感度を持つ暗黒物質探索について少し解説しようと思います。私たちの銀河に暗黒物質が存在することは既にわかっているので、それらを直接的に検出することを目指しています1)。暗黒物質は銀河中の物質とほとんど相互作用せず等方的に運動する (と思っている) のに対し、私たちが住む太陽系は銀河をぐるぐる回るので、相対的に太陽系の進行方向から「暗黒物質の風」を感じるはずです。そしてその進行方向にははくちょう座 (英語でいうとCygnus) があります。なので、暗黒物質探索においてその正体・性質をより詳しく解明するためには、はくちょう座の方向からの暗黒物質をとらえることが重要です (なので国際会議"CYGNUS"と名付けました)。先ほど暗黒物質との相対的な運動を仮定したわけですが、方向感度を持つ暗黒物質の探索実験では、暗黒物質と衝突した物質 (原子核) が散乱される方向を観測することでその到来方向を推定し、上記の仮定の真偽を問おうとしています。


図 1:銀河中の暗黒物質の相対的な運動方向の模試図。


国際会議には約50名が国内外から参加し、うち国外からは31名 (リモート含む) が参加しました。国際会議のプログラムをどう組むかはもちろん、海外からの参加者はコーヒーをよく飲むかもとか、国際会議での交流のためのディナーをどう計画するかなど、いろいろなことを考える必要があり、そういった計画能力も鍛えられた (?) 感じがしています。とはいえ、それを通じていろいろな研究者と交流を持つことができたことに加え、世界中の方向感度を持つ暗黒物質探索コミュニティにおける私たちの立ち位置というのをより詳細に認識することができて非常に充実した国際会議でした。


図 2:国際会議CYGNUS2026での集合写真。代表ということで中央を陣取ったがなぜかずれてしまった。


今回の国際会議でもうひとつ嬉しかったのは、方向感度をもつ暗黒物質探索というトピックを超えた交流ができたことでした。この会議では「ミグダル効果2)」という事象の探索チーム達も招待することにしました。この国際会議にて初めて国内外でのアクティブな実験グループたちが集結し、有意義な議論を交わしてコミュニティを発展させることができました。また、この地下稀事象領域においてよく話題となるのが大気中 (ガス中) のラドンの崩壊による背景事象問題なのですが、本領域で取り組んでいるラドンフィルター装置の研究についてオーストラリアの研究者とのパイプを作ることもできました。

この国際会議以外のところでも、会議前にイギリスの研究者が神戸大学を訪れて議論を交わしたり、会議の翌日にイタリア、オーストラリアのグループと合同で打ち合わせを行ったりなど、国際的なコンソーシアムとして研究を推進させることができた非常に有意義なイベントだったと思います。この記事を書いているのが国際会議後2ヶ月ほど経った時期なのですが、あのとき受けた刺激はまだまだ健在で、現在もやる気マンマンで研究に励んでいます!


1) この「ヤサシイカイセツ」シリーズでも登場したいくつかの暗黒物質の探索実験でも同様です
2) 実際は暗黒物質探索に対して無関係ではないのですが、説明すると話が大きくなってしまうので割愛します



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著者

東野聡
計画研究B03
神戸大学特命助教
おいしいものにおいしいものを足すのが趣味です。先日ラーメンにパスタを追加してみたところ絶望的にしょっぱかったです。

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