〓 代表挨拶

 宇宙の始まりから現在までの歴史にはたくさんの謎が存在しています。

  • 宇宙の始めには物質の元となる素粒子が作られ軽い元素が合成されました。
  • 重力がそれらを引きつけ大小様々な構造を形成します。
  • 超新星爆発を起こした恒星は多様な元素をばらまいて、それらを原料に資源に富んだ地球が形成されます。
  • そして、太陽活動に影響されながら人類が誕生する環境が実現しました。

 この一連の現象には、宇宙・素粒子の大問題といわれる現在の標準理論では説明できない謎が含まれていて、他にも未解明の事柄がたくさんあります。

  • なぜ物質の元となる素粒子と反物質の元となる反粒子は同数でなかったのでしょう?
  • 宇宙の構造形成に必要な標準理論には含まれない暗黒物質とは何でしょう?
  • 超新星爆発はどの時代にどの程度起こったのでしょう?
  • 超新星爆発や星進化の仕組みは理解できているのでしょうか?
  • 太陽や地球は何をエネルギー源に活動しているのでしょう?
  • 物質粒子の中で桁違いに多いニュートリノはなぜ極端に軽いのでしょう?

 本領域の計画研究には、これらの謎を究明するための世界をリードする地下素粒子原子核研究や革新的な検出技術の開発チームが参画しています。ニュートリノを伴わない二重β崩壊の探索・暗黒物質の直接探索・天体ニュートリノの観測を行うこれらの研究は、希な信号を捉えるために極低放射能環境を必要とします。これまで個別に高めてきた極低放射能技術を束ねてさらに進化させることで、宇宙史の各時代を特徴付ける重要問題解明において効率的かつ長期的に高い競争力を発揮できます。ここに物質粒子の起源・宇宙進化の究明において先駆的かつ革新的な理論研究を行ってきたチームが加わることで、統一的な素粒子模型・宇宙像の構築が期待できます。

 地下の極低放射能素粒子原子核研究が一丸となって宇宙の歴史をひもときたいと結集した本新学術領域は、人類の知的好奇心に応え科学立国日本を支える人材育成に大きく貢献していく所存です。今後ともご支援のほどよろしくお願いします。





領域代表:
東北大学ニュートリノ科学研究センター 井上邦雄