文部科学省 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 領域番号 6105 Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas

地下から解き明かす宇宙の歴史と物質の進化

計画研究 A01 逆階層領域でのニュートリノのマヨラナ性の研究

 ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊(0ν2β)探索は、「宇宙になぜ物質が生き残ったのか」「ニュートリノはなぜ桁違いに軽いのか」といった宇宙素粒子の大問題を解く鍵となるニュートリノのマヨラナ性(粒子・反粒子の同一性)検証の唯一現実的な方法である。これまでに、カムランドの極低放射能環境を活用しクリーン化のための最先端の手法を構築することで、0ν2β探索において世界を大きくリードしニュートリノ質量の縮退構造をほぼ排除することに成功した。同時に倍量の二重ベータ崩壊核を導入できる、よりクリーンなミニバルーンの導入も達成している。

 本計画での高感度化の肝は、新型電子回路導入による宇宙線起源 10C バックグラウンドの低減である。既に究極のバックグラウンドとなる太陽ニュートリノの 2 倍程度にまで低減できているが、大光量ミューオン後の大きなオーバーシュートを改善することでさらに 4 分の 1 以下へ低減が可能であり、逆階層領域に到達し 40meV を切る感度が実現する。複数の理論モデルが解を予想しているパラメータであり、すなわち大発見を期待できる。

 一方、逆階層領域全体をカバーする 20meV の感度実現には、エネルギー分解能の向上とミニバルーンフィルム上のバックグラウンドの能動的識別が効果的であり、そのための開発も並行する。本計画で実現する宇宙線起源バックグラウンドの識別技術や表面クリーン化の手法は、他の計画班にも大いに活かされる。

 また、0ν2β探索と並行して反ニュートリノ観測も継続できるマルチパーパスが本計画の特徴であり、原子炉ニュートリノ振動の研究・地球ニュートリノ観測においても世界をリードしている。多くの原子炉が停止して地球ニュートリノを観測しやすい現状は、地球モデルを選別して始原隕石やマントル対流を解明する絶好の機会である。それに不可欠な安定観測実現のため、新型電子回路導入で可能になるPMT印加電圧の低減を実施し、装置の長寿命化を図る。

 本計画は、ニュートリノのマヨラナ性研究による宇宙の物質起源解明とともに、地球ニュートリノ観測による地球始原隕石の解明で、宇宙の歴史と物質の進化の系統的理解に大きく貢献するもので、カムランドグループが総力をあげて実行する。

メンバー

[代表]

井上邦雄 Kunio, INOUE
東北大学 教授 宇宙素粒子実験
計画研究及びカムランドの統括
パンフレット[PDF]

はじめに

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