領域概要
これまでの研究から、宇宙の物質は、宇宙の歴史に沿って、
1) | 宇宙の誕生時には、同数あった物質・反物質からわずかの量の物質だけが残り、 |
2) | その物質の4倍もの量の未知の暗黒物質の引力の作用によって、銀河が形成され、 |
3) | 我々にとって既知である20%の物質についても、宇宙当初の水素、ヘリウム、リチウムというわずか3種の元素から、恒星内でその他元素が生成され、 |
現在に至っている、と考えられています。
しかし、この物質の歴史について深く掘り下げていくと、「どうして物質だけが残ったのか」「暗黒物質の正体は何か」「元素がどのように作られ、拡散したのか」について、実は答えることができません。
つまり、「我々の周りにあふれる『物質』は、実は謎に満ちた存在」なのです。
これは驚愕の事実で、物質に対しての考え方が一変するほどです。
その衝撃の大きさを考えると、素粒子・原子核物理学と言った枠を大きく越えて、文化や歴史にまで影響を及ぼす可能性すらあります。
本領域研究は、「
物質優勢の謎」「
暗黒物質の正体」元素合成と拡散の場である「
超新星爆発」の3テーマを主に研究し、物質の起源の謎の解明に挑みます。
本領域は、この謎を解明することで、我々が当然視している「物質」について、新たな視点、つまり、
新たな物質観の創造を目標に研究を行います。
領域推進の計画
本領域は、以下の5つのテーマから「物質の起源の謎」に迫ります。
《研究項目 A》 | 物質優勢の謎に挑む、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の実験的研究 |
《研究項目 B》 | 銀河を育んだ未知の重力源、暗黒物質の正体解明を目指す実験的研究 |
《研究項目 C》 | 宇宙の重元素の製造と拡散の現場、超新星ニュートリノの詳細観測と超新星予報を推進する実験的研究 |
《研究項目 D》 | 稀事象探索の基盤技術の普遍化と拡大を推進する開発・研究 |
《研究項目 E》 | 稀事象研究から宇宙物質の起源と進化を体系化する理論的研究 |
協力体制の母体となる《
研究項目 D》が、物質の起源の謎を解明するための基盤技術である「稀事象探索技術」の開発・研究を担当します。
この堅固な基盤に立脚して、《
研究項目 A〜C》が世界トップの成果を出す役割を担います。
《
研究項目 E》は、その成果を、より高度な体系としてまとめ、宇宙物質の起源と進化へと昇華し、宇宙の歴史全体を通じての物質の歴史を編纂します。
本領域研究は、これらのミッションを通じて、
宇宙の物質の起源と進化の謎を解き明かし、新たな物質観を創生します。